(質問)
会社側から月に10時間以上、時間外勤務をしないよう命じられていますが、業務の都合上、どうしてもこれを超えてしまいます。この場合、時間外手当を請求できるでしょうか?
(回答)
使用者は、労働基準法上の労働時間(原則として1日8時間、週40時間)を超えて、当然には労働者を働かせることはできず、使用者が法律上必要な手続きをとり、時間外労働をさせることが許される場合でも、使用者は、労働基準法上の労働時間を超える部分について、所定の賃金の25%増の賃金を支払わなければなりません。
この点、明確に時間外業務の命令がなかったとしても、使用者側で労働者が時間外勤務をしている事実を認識していた場合には、時間外手当を支払わなければなりませんが、他方で、会社側から明確に時間外勤務を禁止する命令が出ていた場合、これに反して業務を行ったとしても、その業務は労働時間にあたらず、時間外手当を請求できないとする裁判例があります。もっとも、これらの裁判例によっても、時間外手当の対象となる時間外勤務にあたるかどうかは、指示された業務の処理に要する時間、所定の時間までに処理できなかった場合には管理者に業務を引き継ぐなどの代替措置が指示されていたか否かなどを考慮することになっており、ご質問のように、時間外勤務が、業務の都合上、どうしても会社の命令である月10時間を超えてしまうような場合には、時間外手当を請求できる可能性があります。
(担当弁護士)
鈴木 亮