(質問)
20年以上前に購入した土地に公有地が含まれている事がわかりました。土地の上には建物が建っていますが、行政から建物の撤去を求められた際は、それに従わなくてはならないのでしょうか?
(回答)
他人名義の土地を長期間占有していた場合、通常は、民法162条に規定されている取得時効の要件を満たせば、その土地の所有権を取得する事が出来、名義人から建物の撤去を求められても、撤去する義務はありません。
使用していた土地が公有地の場合でも、所得事項は認められるでしょうか。
この点、公有地などの「公共用財産が、長年の間事実上公の目的に供用されることなく放置され、公共用財産としての携帯、機能を全く喪失し、そのものの上に他人の平穏かつ公然の占有が継続したが、その為事実上公の目的が害されるようなことも無く、もはやそのものを公共用財産として維持すべき理由がなくなった場合」には、黙示的に公用が廃止されたものとして、公共用財産も取得時効の対象となり得ます(最高裁判所昭和51年12月24日判決)。裁判例によれば、この目次的に公用が廃止されたという状況は、所得事項の要件である所有の意思を持った占有を開始する時までに発生していなければいけません。
なお、所有の意思を持って占有していたといえるかは、客観的な事情から判断されますので、例えば、公有地部分を含めて購入したといった場合でなければならず、公有地を勝手に占拠したといった場合には認められません。
今回問題となっている公有地について所得事項が認められるか検討するには、占有を開始したときに、すでに黙示的に公用が廃止されたといえる状態であったか、という点を確認する必要があり、公用が廃止されたといえれば、所得時効を主張することで、建物を撤去する必要が無くなります。
他方、所得時効が認められない時は、その公用地を管理している行政から払い下げを受ける事が可能な場合もありますので、行政にご相談されるのが良いでしょう。
(担当弁護士)
吉田瑞穂