(質問)
母親と離婚してから疎遠だった父親が亡くなったことを知りました。定かではありませんが、借金も抱えていたようです。父親が住んでいたアパートの大家さんから、滞納していた家賃の支払を求められています。子どもである私には支払義務があるのでしょうか?また、これからも父親の借金の請求を受け、支払わなければならないでしょうか?
(回答)
子どもは亡くなった父親の相続人であり、相続人は亡くなった人(被相続人)の権利だけでなく、義務も相続しますので(民法896条)、相談者は滞納家賃はもちろん、父に借金があれば、それを支払わなければならないことになります。
この点、父親が亡くなったことを知ってから3か月以内に相続を放棄すれば、相続しないことになりますので、滞納家賃その他の負債を負うこともなくなります(民法915条第1項)。相続放棄は家庭裁判所に対して行うことが必要です。3か月以内に放棄しなかった場合や、3か月の間に被相続人の財産を処分したりすると相続放棄をすることはできなくなり、相続を承認したことになりますので、注意が必要です。なお、やむを得ない事情がある場合には、家庭裁判所が認めれば、3か月の期間を延長することができます。
相続を放棄すると、はじめから相続しなかったことになるので、仮に父親に負債以上の財産があった場合でも、資産のみを相続することはできませんが、限定承認といって、被相続人の資産の範囲内でのみ負債を負えばよくなる方法もあります(民法922条)。限定承認は相続人全員で行うことが必要で(民法923条)、その後の手続も複雑ですので、詳細について弁護士に相談されることをお勧めします。
(担当弁護士)
狩倉博之