(質問)
兄が亡くなりました。兄には子がなく、相続人は兄の妻と弟である私の二人です。 兄は、生前「全財産を妻に相続させる」との公正証書遺言を作成しておりましたが、不動産の登記といった相続手続きをしないまま、兄が亡くなってから半年ほどで兄の妻も亡くなってしまいました。兄の遺産はどうなるのでしょうか。私が相続することはできるのでしょうか
(回答)
お兄様が死亡した時点で、公正証書遺言の効力が生じ、不動産を含むお兄様の全財産がお兄様の妻に相続されています。不動産の相続登記手続が未了のままで妻が死亡した場合であっても、不動産の所有権は妻に移っており、妻の相続人に相続されることになります。お兄様と妻との間に子はいないので、ご存命であれば妻のご両親など直系尊属が、既に死亡している場合には妻の兄弟姉妹が相続人となります。 相続人がいない場合や相続人全員が相続放棄をした場合には、利害関係人が家庭裁判所に申し立てることにより相続財産清算人が選任され(民法九百五十二条)、相続財産の管理と清算が行われることになります。債務を支払っても相続財産が残る場合、特別縁故者に分与されることがあり、なお残余がある場合には国に帰属します(民法九百五十九条)。 ご相談者がお兄様の財産を相続することはできないと思われますが、お兄様の妻に相続人がいない場合で、ご相談者がお兄様の妻の特別縁故者にあたる場合は、妻の財産の全部または一部を分与される可能性はあります。特別縁故者とは、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者、その他被相続人と特別の縁故があった者をいい(民法九百五十八条の二)、家庭裁判所が個別の事情を考慮して分与を認めるかどうかを判断します。例えば、ご相談者が、お兄様の妻の療養看護に努めていたといった事情があれば、特別縁故者として妻の遺産の分与を受けられる場合があります。 担当弁護士 小川 拓哉