(質問)
Aは父親から相続した土地を抵当に借金をしたいと考えていたが、Aのいとこ(父親の甥)が抵当に入れてすでに借金をしていた。この借金を父親が同意をしていたが確認できていない。この借金の抵当権を取り消すことができるか?
(回答)
土地を抵当に入れるには、土地の所有者が抵当権者との間で抵当権設定契約を締結し、法務局で抵当権設定登記を行うのが一般的です。抵当権設定登記には、土地の登記済証(権利証)もしくは登記識別情報、発行から3ヶ月以内の印鑑登録証明書などの書類が必要とされます。
質問の事例で、Aが抵当権を取り消すためには、「父親はAのいとこの借金のために土地を抵当に入れることを同意していなかった」と証明していかなければなりません。
Aの父親は既に亡くなっており、土地を抵当に入れた経緯や同意の有無を直接確認することはできないので、当時の事情を知る人の証言や残された資料から証明をすることになります。しかし、父親が土地を抵当に入れたときには、最初に述べたように、抵当権設定契約に署名押印をしたり、抵当権設定登記のために権利証や印鑑登録証明書を提出しているはずですので、これらの書類が偽造であるとか、父親がだまされていたとの明確な証拠がない限り、父親は土地を抵当に入れることに同意していたものと判断される可能性が高いと思われます。
よって、単に「父親が同意していたか確認できていない」というだけでは、抵当権を取り消すことは難しいといえるでしょう。
なお、抵当権を取り消すことができない場合でも、父親から相続した土地の価値が既に登記されている抵当権により担保されている借金の金額よりも大幅に高額であるような場合には、Aは、いとこが設定した抵当権に次いで、同土地に第2順位の抵当権を設定し、借金をすることができる場合もあります。
(担当弁護士)
寺澤恵美
平成25年3月22日