借金の返済ができず支払いを命ずる判決が言い渡されました。

(質問)

借金の返済ができず支払いを命ずる判決が言い渡されました。債権者からは、差押えをすると言われています。障害があり無職で、障害年金のみで生活しており、財産といえるものは年金が入金される預金くらいです。
(回答)

判決が確定すると、債権者は債務者の財産を差し押さえることができます。また、判決に仮執行宣言が付されている場合には、確定前でも差押えが可能です。
しかし、差し押さえることができる財産がなければ差押えはできません。障害年金自体は差押えを禁止されていますので、年金を受け取る権利自体が差し押さえられることはありません。ただし、年金が入金される預金は差押えが可能なので、債権者からの借入金の入金や返済額の引落がされていた預金口座に障害年金が入金されていると、年金が預金された状態で差押えを受ける可能性があります。生活ができなくなってしまわないよう、入金口座の変更を検討する必要があります。
この点、債権者は判決に基づき金融機関に対して預金の有無を調査することができるようになりましたので、債権者の調査により他の預金口座も知られてしまう可能性があります。年金の中から少額でも支払が可能であれば、月々支払が可能な金額による長期の分割払いによる和解を試み、そのような和解に債権者が同意しない場合には、破産を申し立てて免責を受け、返済を免れるといったように、負債を整理することを検討すべきです。
法テラスを利用することにより、弁護士費用を分割で支払うことで弁護士に依頼することが可能なので、法テラスを利用した弁護士への依頼を検討してはどうでしょうか。

担当弁護士
狩倉 博之
カテゴリー: お金のこと

令和六年四月から相続登記が義務化されると聞きました。

(質問)

令和六年四月から相続登記が義務化されると聞きました。父や母が他界した後、父親名義のままの自宅に長男の私が住んでいます。自宅建物と敷地の固定資産税は支払っていますが、それでも登記をしなければならないのでしょうか。
(回答)

 本年四月一日から相続登記の義務化が施行され、所有者の死亡を知り、所有権を取得したことを知った日から三年以内に相続登記をしなければならなくなりました。施行日前に所有者が死亡している場合には、死亡等を知った日と施行日のいずれか遅い日から三年以内となります。正当な理由なく怠ると、十万円以下の過料に処せられます。相続人が一人の場合、直ちに単独で相続した旨の登記ができるのに対し、複数の場合には、相続人間で遺産分割を行い、誰が相続するかを確定させたうえで登記を行うことが望ましいですが、三年以内に遺産分割が成立しないときは、相続人が共有しているとの内容の登記を申請することになります。そのときは、遺産分割の成立後、成立日から三年以内に遺産分割の結果に基づく登記手続を再度行うことになります。この点、義務化とともに、相続人申告登記という制度が新設され、相続が開始したことと自身が相続人であることを登記官に申告することで、義務を果たしたものとみなされます。この場合も、後日、遺産分割が成立したときは、成立日から三年以内に遺産分割の結果に基づく登記をしなければなりません。
 ご相談者の場合も、本年四月一日から三年以内に相続登記をする義務があり、相続人が複数いて、三年以内に遺産分割が成立しないときは、相続人による共有の登記を申請するか、ご相談者が相続人であることを法務局に申告するかのいずれかを行う必要があります。

担当弁護士
狩倉 博之
カテゴリー: 土地・住宅のこと

大家にアパート退去費用を求めることは可能でしょうか。

(質問)

独居高齢者です。大家からアパートが老朽化したので建て替えたいと退去を求められました。大家に退去費用を求めることは可能でしょうか。
(回答)

賃貸人である大家が賃借人に対して退去を求めるためには、退去を求めることについての正当事由が認められる必要があります(借地借家法28条)。この正当事由の有無の判断にあたっては、賃貸人と賃借人双方の建物を使用する必要性が主な判断基準となり、建物の現況や退去費用などの金銭給付の有無等が補完要素として考慮されることになります(同条)。今回のご相談のように、アパートの老朽化という理由から退去を求められている場合については、建物が荒廃しており倒壊の危険が差し迫っているというような切迫した状況でない限りは、老朽化との理由のみをもって退去を求める正当事由が認められることは通常はなく、前述した補完要素も考慮されることになりますので、多くの場合、退去費用を求めることが可能であると考えられます。
なお、退去費用の額についての法的な算定基準はありませんが、引越費用や新たな入居先への入居にかかる費用等の移転実費や借家権価格相当額等を考慮して決定されることが多いといえます。
今回のご相談者におかれましても、建物の老朽化の程度にもよりますが、多くの場合は切迫した荒廃状況にはないと思われますので、大家に対し、退去費用を求めることが可能であると考えます。

担当弁護士
小川 拓哉
カテゴリー: お金のこと, 土地・住宅のこと

前夫に養育費を支払ってもらうには。

(質問)

昨年、夫と協議離婚し、私が子どもの親権者になり、養育していくことになりました。夫は、離婚時には養育費を支払うと約束しましたが、現在まで送金してきません。養育費を支払ってもらうには、どうしたらよいでしょうか。
(回答)

前夫との養育費を支払う旨の約束が公正証書によってなされており、公正証書に支払が滞った時は直ちに強制執行に服す旨の文言が記載されている場合には、公正証書により、前夫の給料や預金等を差し押さえるといった強制執行の申立を裁判所にすることができます。将来分の養育費が存在する場合には、支払期限が到来していない将来分を含めて一括して強制執行をすることもできる(民事執行法151条の2)ので、給料の差押えを申し立て、将来にわたる前夫の給料の2分の1までを差し押える(同法152条3項)ことも可能です。
一方、養育費支払の約束が口頭である場合や任意の合意書面による場合には、前述したような公正証書を新たに作成する方法や、合意に基づき養育費の支払を求める民事訴訟を提起することが考えられます。もっとも、支払をしない前夫から公正証書作成の協力を得ることは難しく、また、裁判は長期化が予想され、弁護士費用もかかるため、日々の子どもの監護・養育に必要な養育費の請求になじまない場合があります。
そこで、養育費請求調停を家庭裁判所に申し立てる方法が考えられます。調停は、弁護士をつけず本人でも可能ですし、訴訟よりは早期に解決する可能性があります。また、調停が成立すれば、調停調書により、支払が滞った際の強制執行が可能となります。


担当弁護士
小川 拓哉
カテゴリー: お金のこと, 離婚

私の借入と母の税金滞納をどのように整理すればいいでしょうか。

(質問)

母が所有する自宅に母と二人で暮らしており、私は失業中で、母の年金のみで生活しています。私には消費者金融からの借入が百万円ほどあり、母の年金を生活費と私の借入の返済にあてたことで、自宅の固定資産税を支払えなくなり、支払が滞っています。母には固定資産税の滞納以外に負債はありません。私の借入と母の税金滞納をどのように整理すればいいでしょうか。
(回答)

固定資産税を滞納すると、延滞金が発生するうえ、納税の督促や財産の差押がされ、自宅を失うことになりかねませんので、固定資産税は滞納せず、納めるべきです。そもそも、母が負う固定資産税が支払えなくなるにもかかわらず、母の年金を娘の返済に充てることは適当ではないので、娘の返済に充てることはやめ、市役所と協議して滞納分の返済方法を決め、納税すべきと考えます。
これにより、娘の借入の返済ができなくなりますので、まずは、仕事を探して収入を得たうえで、任意整理をすることが考えられます。任意整理は、裁判所の手続を利用せず、債権者との合意により、支払総額や分割払いといった支払方法を定め、支払可能な範囲で返済を行う方法です。本件であれば、借入金百万円を期間を定めて分割で支払っていくことが考えられます。娘が直ちに仕事につけない場合には、自己破産を検討することになります。自己破産は、裁判所に申し立て、財産があれば換価・配当したうえで、債務の支払を免責してもらう手続です。娘に資産がなければ、換価・配当はせず、比較的簡易に手続が終了しますが、娘に多額の浪費があるといった免責が不許可になる事情があると、破産管財人が選任されたり、免責が不許可になったりすることもあります。娘の借入については、弁護士に相談して、対応方法を検討するのがよいと思います。


担当弁護士
井上 志穂
カテゴリー: お金のこと

姉がアパートを借りることになり、妹として保証人欄に名前を書いてほしいと言われました。保証人になると不利益になることはあるのでしょうか。

(質問)
姉がアパートを借りることになり、妹として保証人欄に名前を書いてほしいと言われました。保証人になると不利益になることはあるのでしょうか。
(回答)
賃貸借契約の保証人欄に名前を書くということは、保証人になることを意味します。保証には、単なる保証と連帯保証がありますが、賃貸借契約での保証の多くは連帯保証でしょう。連帯保証人の場合、本来の債務者(以下「主債務者」といいます。)が債務を履行しないとき、主債務者への催告や強制執行がされなくとも、損害賠償債務といった主債務に付随するものを含め、主債務者が負っていた債務を主債務者に代わって履行する責任を負います。 賃貸借契約の場合、家賃や部屋の設備の修理代、退去に伴う原状回復費等の債務を負う可能性があります。ただし、賃貸借契約の連帯保証のような継続的に債務が発生する契約では、未払家賃のみならず修理代や原状回復費等、保証人が負うことになる債務が不特定であるところ、このような不特定な債務を対象とする保証契約では、保証債務を負うことになる金額の上限額(極度額)を定めなければならないことになっていますので(民法465条の2第1項)、契約で定められた極度額が保証人が負担することになる上限額となります。 以上のように、保証人、特に連帯保証人は重い責任を負いますので、お姉様のアパートの賃貸借契約の保証人になるか否かについては、保証人としてお姉様に代わって極度額の範囲内でお姉様の債務を負う可能性があるという不利益を十分に理解したうえで、決定するべきだと思われます。 担当弁護士 小川 拓哉
カテゴリー: お金のこと

隣地の庭木の枝が敷地内に入ってきています。隣地の住人に枝を切るように請求できますか。

(質問)
隣地の庭木の枝が敷地内に入ってきています。隣地の住人に枝を切るように請求できますか。
(回答)
隣地の枝が越境している場合、従来は、越境された土地の所有者は、その越境した竹木の所有者に対し、枝の切除を請求できましたが(旧民法二三三条)、竹木の所有者に無断で越境した枝を切除することは基本的には許されず、越境した竹木の所有者に対して訴えを提起して判決を得て、強制執行の手続を取るほかありませんでした。 民法が改正され、令和五年四月一日からは、①竹木の所有者に対して越境した枝を切除するように催告したにもかかわらず、相当期間内に切除されなかった場合、②越境した竹木の所有者を知ることができず、またはその住所を知ることができない場合、または、③急迫の事情がある場合には、越境された土地の所有者において、越境した枝を切除できることになりました(民法二三三条三項)。 ご相談の場合、越境した木の所有者に対し、越境した枝の切除を請求し、事案にもよりますが、二週間程度経過しても越境した枝の切除がなされなければ、ご自身で切除できます(前記①)。また、越境した木の所有者やその住所が判明しなければ、やはりご自身で切除できます(前記②)。なお、切除費用は、越境した木の所有者に請求できます(同法七〇三条・七〇九条)。また、切除のために隣地を使用する必要がある場合には、基本的にはあらかじめ隣地の所有者等に対し使用目的や日時等を通知のうえ(同法二〇九条三項)、隣地の所有者等にできるだけ損害が生じないように配慮して使用しなければなりません(同条一項・二項)。 担当弁護士 西川 啓
カテゴリー: 隣家トラブル

兄が亡くなりました。兄には子がなく、相続人は兄の妻と弟である私の二人です。

(質問)
兄が亡くなりました。兄には子がなく、相続人は兄の妻と弟である私の二人です。 兄は、生前「全財産を妻に相続させる」との公正証書遺言を作成しておりましたが、不動産の登記といった相続手続きをしないまま、兄が亡くなってから半年ほどで兄の妻も亡くなってしまいました。兄の遺産はどうなるのでしょうか。私が相続することはできるのでしょうか
(回答)
お兄様が死亡した時点で、公正証書遺言の効力が生じ、不動産を含むお兄様の全財産がお兄様の妻に相続されています。不動産の相続登記手続が未了のままで妻が死亡した場合であっても、不動産の所有権は妻に移っており、妻の相続人に相続されることになります。お兄様と妻との間に子はいないので、ご存命であれば妻のご両親など直系尊属が、既に死亡している場合には妻の兄弟姉妹が相続人となります。 相続人がいない場合や相続人全員が相続放棄をした場合には、利害関係人が家庭裁判所に申し立てることにより相続財産清算人が選任され(民法九百五十二条)、相続財産の管理と清算が行われることになります。債務を支払っても相続財産が残る場合、特別縁故者に分与されることがあり、なお残余がある場合には国に帰属します(民法九百五十九条)。 ご相談者がお兄様の財産を相続することはできないと思われますが、お兄様の妻に相続人がいない場合で、ご相談者がお兄様の妻の特別縁故者にあたる場合は、妻の財産の全部または一部を分与される可能性はあります。特別縁故者とは、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者、その他被相続人と特別の縁故があった者をいい(民法九百五十八条の二)、家庭裁判所が個別の事情を考慮して分与を認めるかどうかを判断します。例えば、ご相談者が、お兄様の妻の療養看護に努めていたといった事情があれば、特別縁故者として妻の遺産の分与を受けられる場合があります。 担当弁護士 小川 拓哉
カテゴリー: 相続のこと

夫の父の看病と介護をおこなっています。死亡後どのような請求ができるのでしょうか。

(質問)
私は長男の嫁ですが、夫の父の看病と介護をおこなっています。夫の父の死亡後、法定相続人ではなくても、このような貢献に対する請求をできるようになったと聞きました。どのような請求ができるのでしょうか。
(回答)
被相続人の財産の維持または増加について特別の貢献をしたとしても、従来は、貢献をした者が相続人であるときに限って寄与分が認められるのみでした(民法九〇四条の二)。しかし、平成三〇年の相続法の改正により、相続人以外の者でも、親族(被相続人の六親等内の血族、配偶者及び三親等内の姻族)であるときは、特別の寄与があれば、相続人に対し、特別寄与料を請求することができるようになりました(同法一〇五〇条一項)。なお、同法の施行は令和元年七月一日であり、同日より前に相続が開始していた場合には適用されません。 ご相談者の場合、夫の父が死亡して同人を被相続人とする相続が開始したのが令和元年七月一日以降であれば、被相続人の長男の妻として、被相続人の三親等内の姻族にあたるため、相続人に対し、特別寄与料の支払を請求することができます。請求の相手方である相続人に対し、無償の看護と介護により、被相続人の財産の維持または増加について貢献しており、その貢献が「特別の寄与」であった旨を主張し、特別寄与料の金額について協議することになります。 協議が整わないときまたは協議をすることができないときには、家庭裁判所に対し、特別の寄与に関する調停の申立を行い、調停の場で協議することになります(同法一〇五〇条二項)。なお、相続の開始および相続人を知った時から六か月または相続開始の時から一年を経過したときには、調停を利用できませんので注意が必要です(同項ただし書)。 調停が不調に終わった場合には、家庭裁判所が審判により特別寄与料の額を決定し(同条三項)、その支払が命じられます。 担当弁護士 西川 啓
カテゴリー: 相続のこと

一年の有期契約でパート勤務をしていますが、雇止めが心配です。

(質問)
一年の有期契約でパート勤務をしています。更新を繰り返して、既に五年目になりました。今後も働き続けていきたいと思っており、雇止めが心配です。有期の契約が無期の契約になる場合があると聞きましたが、どのような場合に認められますか。
(回答)
有期の契約が無期の契約になるというのは、労働契約法一八条一項が定める無期転換制度のことです。有期の契約が無期に転換されるためには、①同一の企業との間に二つ以上の有期労働契約を締結していること、②二つ以上の有期労働契約の通算期間が五年を超えること、③有期労働契約の期間満了前に無期労働契約締結の申込をすること、これら三つを充たす必要があります。 ご相談者の場合、まず、一年の有期労働契約を更新して五年目になるとのことで、これが同一の事業主の下でなされているのであれば①を充たします。 次に、通算期間が五年を「超える」ことが必要ですから、現在締結中の五年目の有期労働契約がもう一回更新されて六年目の初日を迎えて初めて無期転換権が発生します。そのため、現在の契約期間が満了した時点で雇止めされた場合には、②を充たさないため無期転換権が発生せず、無期労働契約に転換することはできません。ただし、反復更新により実質的に無期労働契約と同視できること、または、契約更新につき合理的な期待が認められることのいずれかに該当する場合には雇止めは制限されます(労働契約法一九条)。 最後に、通算期間が五年を超えた場合でも、自動的に無期労働契約になるわけではありません。③五年を超えた有期労働契約の契約期間中に、無期労働契約に転換したい旨の申込の意思表示を勤務先に行う必要があります。申込は、後の紛争防止の観点から、書面により行うべきです。 担当弁護士 西川 啓
カテゴリー: 仕事のこと